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月之逃亡者的笼子/第五话

来自东方维基
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第 96-117页
< 第四话   月之逃亡者的笼子   第六话 >
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果てしなく低い地上から 自无比低矮的地上
  この地球に生きている者なら誰でも知っているように、月は常に同じ面を向けて地球の周りを回っている。地上ではいつ見ても何処から見ても月の姿に変化は無い。   正如生活在这个地球之上的所有人都知道的那样,月亮在围绕地球转动的时候总是以同一面朝向地球。所以当你身处地球之上,不管什么时候在任何位置看到的月亮都是一样的。
  この事から、昔は月は天蓋に描かれた絵と思われたりした。常に同じ模様が映し出されていたから、人間はその絵を様々な物に喩えた。兎もそのうちの一つである。   所以在很久以前月亮被看作是被描绘在天空之中的图画。因为总是相同的样子,所以人类将这幅图画比喻为各种各样的东西。而兔子就是其中之一。
  何故月は同じ面を見せて回ることが出来るのか、その理由は単純で月の自転周期と公転周期が高い精度で同期しているから[1]ある。地球を一周するのと同じ期間で自分が一回転すれば月は決して裏側を見せる事なく地球の周りを回る事が出来るだろう。ハンマー投げのようにボールに紐を付けてグルグル回しているような物である。ボールが一回転(自転)するのと同時に、自分の周りをボールが一回転(公転)しているのが判る。   为什么月亮总是以同一面朝向地球呢,其实原因很简单,只是由于月亮的自转周期和公转周期保持着相当高的精密度的同期性。当月亮围绕地球一周之时,月亮本身的自转也同样旋转一周,这样月亮便可以永远不将背面朝向地球。就好像链球运动员在投掷之前旋转时候的情况一样。选手转一圈的同时,链球也随之旋转一圈。
  しかし疑問は残る。果たして何故、月はそのような周期を持つようになったのだろうか、という事だ。   但是这里面还有一个问题。那就是为什么月亮会保持着这样一种旋转规律呢?
  月の民が地上から身を隠して絢爛豪華な生活を送られる様に月を改造したのだろうか。それとも、都を載せた裏側が重たくて遠心力で外側を向いてしまったのだろうか……。   难道是月之民为了不让地上的居民们发现她们在月亮之上过着奢华绚丽的生活吗?还是说承载着月之都的背面因为太重而导致离心力一直朝向外侧呢……
 
  だがしかし、その理由は極めて科学的で非常にくだらないものである彼女——八雲紫は知っていた。   但是,这个理由是非常缺乏科学依据的——八云紫清楚地知道这一点。
  大きな天体に働く引力の性質により、簡単に説明出来てしまう。それは極めて論理的で幻想郷にそぐわない理由であった為、彼女は別の理由を考える事を余儀なくされた。   巨大天体的运动都是由于引力导致的,只要非常简单的说明便可以解释。但是这个解释太过于理论化,没有办法被幻想乡的人们所接受,所以她只能思考另外的解释方法。
  幻想郷は外の世界と常識の結界により断絶され、非常識の内側に存在する。この結界を今のまま保持する為には全ての事柄に裏側が必要なのである。   幻想乡与外面的世界由一个常识的结界所隔绝,存在于超出常识的内侧。为了保持这个结界,一切非常识的事情都需要在内侧进行。
 
  ——新月の夜。   ——新月之夜。
  月が影に覆われ見えなくなる夜の月を新月という。しかし何故新月と呼ぶのか、新暦に慣れた私達には理解しにくい筈なのに誰も疑問に持たない。   当月亮大部分的面积都被地球的阴影所覆盖而看不见的夜晚便被称为新月之夜。但是为什么会被称为新月呢?对于这个问题没有人知道。
  私は月を見る為によく幻想郷の湖に出かける。今夜も私は湖上で新月を眺めていた。当然、湖には何も映っていない。   我为了观察月亮,经常去幻想乡的湖边。今夜我也和往常同样在湖水之上眺望着月亮。当然湖中没有映出任何的东西。
  しかし、私には見えていた。眩しい日の光に照らされている月の裏側が。   但是,我却能够看得见,那被令人目眩的日光所照耀着的月亮的背面。
「紫様」 “紫大人。”
  目の前の狐が私を呼ぶ。目の前の狐——八雲藍は私の忠実な式神である。   我而前的狐狸称呼我道。这只狐狸——八云蓝是我最忠实的式神。
「紫様。どうやら吸血鬼のロケットが完成した様子です。私も見てきましたが、あんなので飛んで大丈夫なのか心配になる代物でした」 “紫大人,似乎吸血鬼的火箭已经建造完毕了。我也看到了那东西的样子,不过很担心那种东西是否真的能够飞上月亮。”
  藍はそう言うと口元を少し歪ませた。それは吸血鬼のロケットに対する嘲笑か、それとも幾度となく報告を受けていたのにも関わらず何にも対策をしなかった私への不信の現れか。私としては後者であって欲しかった。   蓝一边这样说着一边微微撇了撇嘴角。这是对吸血鬼火箭的嘲笑吗,还是对于接到无数次报告却依然没有采取任何行动的我的不信任呢?对于我来说更希望是后者。
「へぇ。それはそれはさぞかし賑やかな完成パーティだったでしょうね。でも、何故私を呼ばなかったの?」 “哎?据说建造完成之后还举行了一场特别盛大热闹的晚会呢。但是,为什么没有叫我参加呢?”
  藍が私に隠れてこっそりパーティに参加していた事くらい気付いている。   蓝没有告诉我、自已悄悄去参加了那场晚会的事情很轻易地便被我发现了。
「あ、いやまぁ。好きで参加した訳じゃないんですけどね。偵察ですよ、偵察。ちょっと様子を見にって感じで……。もしかして紫様も誘った方が良かったですか?」 “啊,不是的。我并不是想去参加那个晚会。其实我是去侦察的,侦察!就是去看看那边的情况……看样子还是叫上紫大人一起去更好一些吧?”
「ええ、誘われたら喜んで断ったのに。ところで、月の公転周期って何日でしたっけ?」 “不,即便你叫我,我也会很高兴的拒绝的。话说回来。月亮的公转周期是多久?”
「へ? 月の公転周期ですか……? えーと、一般に約二十八日と言われていますが、実際には二十七日と三分の一日程度しかありません。ただ、地球も公転していますので新月から満月を経て新月に戻るまでの周期で考えた場合、一般に三十日と言われてますがこれも実際には二十九日と半日くらいです。ってそう言う事は私より紫様の方が詳しいのではないですか?」 “哎?月亮的公转周期……?这个。一般来说是二十八天,不过实际上应该是二十七天零八小时。不过,因为地球也在不断地进行着公转,所以从新月到满月的周期一般是三十天,不过实际上也是二十九天半左右。不过对于这种事,紫大人应该比我还清楚不是吗?”
「そうよね、公転周期は二十八日ではなく、満ち欠けの周期も三十日ではないのよね。これは重要項目だわ」 “是的,公转周期并不是二十八天,盈亏的周期也不是三十天呢,这是非常重要的项目。”
  新月とは旧暦では一日である。月が生まれ変わるという意味でこの日の夜の月は新月と呼ばれているのだ。同様に、三日は三日月、十五夜は満月と旧暦では日付と月齢は一致していた。今よりも月の満ち欠け中心の生活だったのだ。   新月在旧历之中是每个月的第一天。因为嗡意着月亮的新生所以将这天晚上的月亮称为新月。同样,三日被称为三日月,十五的晚上就是满月,旧历的日期与月亮的变化完全一致。一直到现在人类的生活还和月亮的盈亏有着非常重要的关联。
「一日が新月であり、十五夜が必ず満月になる為には一月が三十日でなければならない」 “因为每个月第一天的晚上是新月,十五日的晚上一定是满月,所以一个月必须是三十天。”
「ええそうなりますね」 “嗯嗯,就是如此呢。”
「でも、月の周期は三十日ではない。そのお陰で実際は十五夜が満月になる事の方が少ないのです。不自然だと思わない?」 “但是,月亮的周期却不是三十天。因此实际上十五日的晚上往往不是满月。难道你不觉得这有些不正常吗?”
  私がそう問うと、目の前の狐は少し考え込んだ。   听到我这样问,狐狸不由得思考起来。
「十五日目の夜は完全な夜である筈なのに……そうですね、何者かが意図的にずらしたのでしょうか?」 “十五日的晚上应该是完全的夜晚才对……难道说,是有什么人故意将这个时间搞错了吗?”
「それだけではありません。判っていると思うけど、公転周期と同じく、自転周期も二十七日と三分の一日なのですが……貴方にはその理由を調べて来て貰いましょう」 “不只如此。正如你刚才所说,和公转周期一样,自转周期也是二十七天零八小时……你去调查一下为什么会是这个时间的原因。”
  調べてと言ったが実際には自分で考えて欲しいと思っている。ただ調べるだけなら式神 (コンピュータ) でも出来る。外の世界では式神に帰依して抜け殻のような人間も多くなってしまった。私は式神に式神以上の仕事を与える事で毎日の退屈な生活を、ちょっとでも改善しようとしているのだ。   说是调查,其实就是想让她自己去思考一下。只是调查的话对于式神 (电脑) 来说实在像是一份轻松的工作。外面的世界之中到处都是式神可以凭依上身的躯壳。我经常喜欢给式神分派一些超出她能力的工作,以此来打发每天无聊的生话。
「はあ、まあ良いですけどね。それより吸血鬼のロケットの話ですけど……」 “啊,这个问题放到一边。现在谈一谈关于吸血鬼的火箭的事……”
  ——三日月の夜。   ——三日月之夜。
  三日月は月の剣とも呼ばれる。見た目の鋭さを剣に喩えたのだろう。   三日月又被称为月之剑。大概是因为这一天的月亮看起来好像一把锐利的剑一般吧。
  その剣を持った月に抵抗するように空には一つの大きな流れ星が昇っていた。流れ星は大気の毒気で燃え尽きる宇宙の屑だと聞いているが、それが登るというのは地上の屑が燃え尽きているのだろうか。   而天空之中升起一道明亮的流星,似乎在与持有月之剑的天空相对峙一般。据说流星是披大气层摩擦烧尽的字宙的尘埃,那么向上飞去的就应该是大地的尘埃了吧。
「紫様。見えますか?」 “紫大人,您看到了吗?”
「見えますよ。そんなに近寄らなくても」 “当然,就算不到跟前去也一样看得见。”
「いや私じゃなくて……。空に一筋の光が昇っていますでしょう? ついに吸血鬼のロケットが発射された様です。あの光はそのロケットなのです」 “其实我也没到跟前……天空中能够清楚的看到一道光线对吧。吸血鬼的火箭终于发射上去了。那道光就是火箭发出老的。”
「うふふ。だからそんなに近寄ってこなくても見えますわ」 “哦呵呵呵,所以说就算不到跟前去也一样能够看得见啊。”
「そうですか。あのロケットですが、発射速度から見て満月の頃に月に辿り着く様に計算されていると思います」 “是的。不过从那个火箭的发射速度来看,预计在满月的时候才能够抵达月亮之上。”
「そう随分とのんびりした旅行ね。それじゃ私達の方が先に着いてしまうかも……」 “还真是一场相当悠闲的旅行呢。看样子我们也许应该能够比她们先到……”
  藍は不思議そうな顔をした。   蓝带着一副不可恩议的表情望着我。
「いや、私達も満月の日に出発する予定ですし、一瞬で月に着いてしまうのですから吸血鬼達とほぼ同時にあると思います……って、気になっていたのですが紫様は何故あの吸血鬼を月に向かわせたのでしょう?」 “啊,可是我们计划在满月的时候出发,即便一瞬间就能够抵达月亮上面,我想大概是和吸血鬼她们同时抵达……不过,紫大人您为什么要让那些吸血鬼到月亮上面去呢?”
「あら、私は吸血鬼を月に行かせたいなんて一言も言ってないわ」 “哎?我可从来都没说过要让那些吸血鬼到月亮上去的话呀。”
「それはそうですが、止めさせようと思えばいつでもチャンスはありましたが、それもしませんでした。吸血鬼のロケットの肝は霊夢の力ですが、その力も紫様が修行させたもの。自分の力で月に行きたがっていた吸血鬼に話を持ちかけて、わざわざ時間を与えてやってその間、紫様はただ見ていただけ。これでどうしてそのような事が言えましょう」 “虽然您没有说过,但是您有很多次机会可以阻止她们,但是却从来也没有那样做过。而且虽然吸血鬼火箭的主要动力是灵梦的灵力,但是那力量也是紫大人你教给她的。而且你还特意留给吸血鬼们那么多的时间。这究竟是为什么呢?”
「……三日月は月の剣とも呼ばれます。あの鋭さを見ればそう呼ばれるのも頷けます。その剣の月を選んで弾丸 (ロケット) を撃ち込むなんて粋じゃない?」 “……三日月被称为月之剑。看到月亮的那种锐利感觉我对这个说法也深表赞同。那么锐利的月之剑难道不会将弹丸 (火箭) 之类的东西击个粉碎吗?”
  月の都には神の剣を扱う者がいる。地上には神の弾を撃つ者がいる。ただそれだけの事だ。   月之都拥有手持神剑者,地球上有射出神弹者。仅此而已。
「藍。貴方は私の命令を聞いていればいいのです。私達は満月の日に湖に映った月から月面へ乗り込みます。その準備を怠らないように」 “蓝,你只要按照我的命令行事就可以了。我们将在满月之夜湖中映出月亮之时前往月亮之上。你不要怠慢了准备工作。”
 
  ——半月の夜。   ——半月之夜。
  雪が舞っていた。今夜は天気が優れないが、満月の時には必ず晴れるだろう。   天空飘起了雪花。虽然今天夜里的天气并不是很好,但满月之夜一定会是个晴天吧。
  月は剣から弓へと姿を変えた。半月はその形を弓に喩え、弓張月ともいう。   月亮从剑变成了弓的形状。半月时候的月亮好像一张弓一样,所以又被称为月张弓。
  剣の時は晴れていたのだが、あいにく弓の姿は見えない。弓を操る者は月には居ないのだろうか。   月之剑的时候天气晴朗,不巧的是月张弓之时却看不见了。难道是因为操纵弓的人不在月亮之上的缘故吗?
「紫様。お寒いのでお屋敷に戻ったら如何でしょう?今夜は月は見えないですし」 “紫大人,天气太冷了还是请您回房问去吧。而且今天晚上也看不到月亮。”
「あら、お月見は月が見えない方が楽しめるのよ。もしかしたら弓張月は紅魔館の地下にいるのかも知れないけど」 “哎呀,赏月就是要在看不到月亮的时候才有趣呢。而且也许月张弓就在红魔馆的地下也说不定呢。”
「はあ、そうですか。そういえば先日言っていた月の公転周期の話ですがーー」 “啊,是这样吗?说起来之前您曾经对我说过关于月亮公转周期的问题——”
  藍は話題を変えた。もう少し話させてくれれば藍にも理解できたのかも知れないのに。   蓝忽然将话题转变。要是能够将刚才的话题继续让我说下去的话,也许蓝也能够理解了呢。
「どうやら公転周期が後から調整された可能性が強い事が判りました」 “我发现,似乎公转周期之后被调整过的可能性很高。”
「どういう意味かしら?」 “这是什么意思?”
「元々は天の道の通り、月は丁度二十八日で一周する物でした。ですが、月の異常な自転運動が公転周期を僅かに狂わせた」 “本来月亮的公转周期是正好二十八天的。但是月亮异常的自动运转使原本的公转周期发生了改变。”
  藍は大きな自転する物体にかかる引力の特性を説明し始めた。月は地上の引力と自分の引力の兼ね合いにより、自らの天体の形を僅かに楕円形に変形させる。その変形が自らに掛かる引力を歪ませ公転運動をブレーキないし、加速させる。自転周期が公転周期より短いと自転の速度を落とし、逆に長ければ自転の速度を速めようとするのだという。   蓝开始解释巨大的自转物体所具有的引力特性。月亮在自身引力与地球引力的双重作用下,使自己的形状由圆形变为稍稍的椭圆形。这种变形不仅没有使其自身的公转运动变慢,反倒更加快了公转的速度。于是月亮在自转周期比公转周期短的时候便降低自转的速度,反之则加快自转速度进行调整。
  藍は回転する二点間の引力の計算を具体的な数値を示して説明してくれた。   蓝又将旋转的两点之间有关引力计算的具体数值作为例子继续解释道。
「そういう理由ですから、自転を極端に狂わせて公転を遅らせた者が居る可能性が高いです。一日の三分の二も狂ったとすれば、誤差の範囲ではないですし」 “因为这个原因,有人极端地让自转失常使得公转变慢的可能性很高。如果一天的三分之二都是失常的,也不能称其为误差了。”
「それで、貴方の結論は?」 “那么,你的结论是什么?”
「公転を速めた理由として考えられる事は、常に地上を観測出来るように同じ面を向け、完全な朔の日(*注 新月の日)を消して、一年中地上を見張れるようにしたとか……。いずれにしても随分と昔の話になりますが」 “加快了公转速度的理由,可能是为了能够时刻观测地上而将同一面对准地上,从而消除完全的朔日(*注 新月之日),使得一年自始自终都能够监视地上……。无论如何这都是很久以前的事了。”
  式神は単純な計算なら右に出る者は居ない。しかし外の世界では引力の計算は三点以上から影響を受けただけで、計算が非常に困難になってしまうという。引力の計算は今の式神を持ってしても[2]手に負えないと言われている。   式神对于单纯的计算不会有半点差错。但是外面的世界对于引力的计算往往要考虑到三点以上的影响,所以计算起来非常的困难。即便如此,式神对于引力的计算依旧非常准确。
  しかし実際は式神が手に負えないのではない。式神に命令 (プログラム) する者の手に負えないのだ。命令さえすれば式神は必ず答えを出す。シンプルな計算方法によって正確な答えを出すだろう。   不过实际上厉害的并不是式神,而是对式神下达命令 (程序) 的人。只要主人下达命令式神则必须要回答出来。所以她只要通过简单的计算便能够得出正确的答案吧。
  言うまでもなく、私が欲しい答えはそんなつまらないものではなかった。   当然,我所希望的答案并不是那么无聊的东西。
「そう、有難うね。やっぱり式神の欠点はそこよね」 “是吗,谢谢了。果然这就是式神的缺点呢。”
「はい?」 “怎么说?”
「調べるとすぐに答えが出てしまう」 “调查之后立刻证可以得出答案。”
「そうですね。紫様が私に何か別の物を調べさせたかったとは思ったのですが、私はあいにく式神なので命令された事以外の行動は出来ないのです」 “是啊。虽然我也认为紫大人是想让我调查其他的事情,但因为我是式神的缘故,能够遵守主人的命令行事。”
「あーあ、つまらないわ。貴方にはがっかりさせられるし、吸血鬼には月に行かれるし」 “啊啊,真是好无聊啊。你这个家伙如此令我失望,吸血鬼她们还是去了月亮上面。”
「……あと、満月まで一週間ほどですね。結局協力してくれる者は居ませんでしたねぇ」 “……还有一个礼拜就是满月之夜了。结果能够帮忙的人一个都没有。”
「あら、私が嫌われているみたいな言い方ね。でも、協力者は沢山居るじゃない。ざっと数えても七、八……九人は」 “哎呀,这么说好像我很被人讨厌似的。不过,能够帮忙的人确实不多。应该只有七、八……九个人吧。”
「そんなに居ますか? うーん、私の知らないところで何かあったのでしょうか」 “有那么多吗?嗯……难道说在我不知道的地方还有什么吗?”
「貴方は天文学的な計算が出来るのに、一桁の足し算は出来ないのね」 “你虽然能够进行天文学方面的计算,但是一位数以内的加减法却不行呢。”
 
  ——満月の前日。   ——满月前日。
  空には満月と見紛う程の大きな月が浮かんでいた。地上から見たら明るく見える月だが、満月は月の裏側にとっては夜の訪れを意味する。今頃月の裏側では夕焼けが見える頃かも知れない。   天空中悬挂着一轮好似满月一般巨大的月亮。虽然从地面上看去月亮十分明亮,但是满月对于月亮的背面来说却意味若夜晚的到来。也许现在月亮的背面正好能够看到夕阳吧。
「いよいよ明日ね。記念すべき第二回目の月旅行」 “终于就要到明天了,值得纪念的第二次月之旅行。”
「紫様。そろそろ月に行ってからの段取りを教えて頂けませんか? 紫様を信用してはおりますが、流石に何も判らないままですので心配です」 “紫大人。可以将去月亮上面的步骤告诉我了吗?虽然我非常信任紫大人,但是什么都不知道的话果然还是有点担心。”
「うふふ。そうね、そろそろ貴方に命令して検査 (デバッグ) しようかしら」 “哦呵呵。是啊,也该命令你去检查 (debug) 一下了。”
「そうして頂けると助かります。それにしても、大昔に月に攻め入った時とは大違いですね。昔は最強の妖怪軍団を集めて意気揚々と攻め込んだと言ったじゃないですか。それでも敵わなかったというのに、それに比べて今回の……言い方は悪いですが気の抜けよう……人数も少ないし、何か無計画にも見えますし、失礼ですがとても敵うとは思えないのですが」 “如果能告诉我就太好了。不过,这次和以前那次的月球进攻非常不一样呢。很久以前据说是集结了数量十分庞大的妖怪军团气势汹汹的进攻。但就算那样最后还是不敌对手,这次我们……可能我这么说您会不高兴……人数这么少,而且也没有一个明确的计划,我觉得这次也不会是对方的对手。”
「貴方には重要な事を教えてあげるわ」 “让我来告诉你一件重要的事吧。”
  私は僅かに端がぼやけた月を見た。あのぼやけた部分が全て晴れた時、地上と月は行き来できるようになる。それを行えるようになったのはそれ程昔の話ではない。精々、千年前くらいだ。   我认真地向月亮望去。当那明暗的部分全部明亮之时,就是能够从地面前往月亮上之日。当然这种说法并不是很久以前的故事,只不过是一千年前而已。
「地上の民は月の民には決して敵わないのよ」 “地上的居民绝对不是月之民的对手。”
  藍は不思議そうな顔をした。   蓝不可思议地望着我道。
「え? 決して敵わない……?」 “哎?绝对不是对手……?”
「遥かに進んだ科学力、強靭な生命力、妖怪には手に負えない未知の力。地上の民は月の民には決して敵わないわ、特に月の都では」 “遥遥领先的科学技术,异常强韧的生命力,凌驾于妖怪之上的未知力量。地上的居民绝对战胜不了月之民,尤其是月之都的家伙。”
「そ、それでは今になって何故、もう一度月に攻めようと思ったのです? おかしいじゃないですか。本当はそんな事思ってないんですよね?」 “可、可是既然如此又为什么要再次进攻月亮呢?难道这不是非常奇怪吗?既然已经知道了这样的答案。”
「いいえ、やはり敵うとは思っていません」 “不,我并不是要去与之为敌。”
「……では、明日は何をしに行くのでしょう?」 “……那么,明天您是要去做什么呢?”
「月の都から新しい幻想郷の住人が現われたのよ? それなりのお返しを頂かないと。そう、住民税みたいなもんね」 “幻想乡之中有从月之都新来的客人呢。所以我必须去向他们收取一些费用,对,就是类似于住民税之类的东西。”
「はい? なんですかそれは」 “啊?那是什么东西?”
  皆、好き勝手に暮らし自由を謳歌している様な幻想郷だが、実際住んでいる者は決して自由を約束されている訳ではない。皆の最低限の自由を確保する為には、ある程度の決まりのようなものが必要となる。それが少なからず不自由を生む。しかしその不自由は、皆の自由の為には必要な事である。   大家可以自由自在生活在其中的幻想乡,实际上对于每—外居住在其中的人并不是没有任何的约束。为了保证大家的自由,自然需要一定程度上的规定,由此也就产生出一定的约束。但是这种约束,正是为了大家的自由所必须的。
  例えば、幻想郷の人間は常に妖怪に襲われる危険があるが、その恐怖を甘んじて受けなければならない。   比如说,幻想多之中的人类经常有受到妖怪袭击的危险,可是他们却不得不忍受这种危险。
  人を襲う事を忘れてしまうと自らの存在は危うくなってしまうから、妖怪は人を襲う。   因为如果妖怪不去袭击人类,那么它们存在的意义便会消失,因此妖怪必须去袭击人类。
  しかし幻想郷に住む者の生活は妖怪の手によって支えられているのである。妖怪が居なければ幻想郷は崩壊してしまうのだから、人間は妖怪に対する恐怖を完全に拭おうとはしない。人間が自分を襲う妖怪を全て退治してしまったら、その時は幻想郷は崩壊してしまうだろう。   但是幻想乡居民们的生活都是由妖怪支撑着的,如果没有妖怪的话幻想乡也就不复存在,所以人类对于妖怪的恐惧是无法完全消除的。如果人类将袭击自已的妖怪们全部赶走的话,那时候幻想乡也会随之崩坏。
  逆の事も言える。妖怪が襲う人間が居なくなってしまったら、妖怪も自らの存在意義を失ってしまう。だから、妖怪は人間を襲うが無闇に食べたりはしない。里の人間は基本的には食べてはいけない約束なのだ。   反之,如果妖怪将人类全部消灭,那么妖怪存在的意义也荡然无存。所以,即便妖怪会袭击人类它们也不会毫无节制的将人类吃掉。一般来说,村子里的居民它们是不会吃掉的。
「新しく住人となった月の民は、妖怪ではなく人間である事を選んだの。つまり、永遠亭のあの者達は人間を選んだのよ」 “那些来自月亮上的新居民,并不能算作妖怪,而应该算是人类。也就是居住在永远亭之中的那些家伙。”
  私は、兎を除いてね、と付け加えた。あれは人間になりすますには無理がある。   当然,除了兔子,那个实在是不能算作人类。
「人間……ですか? あの宇宙人一家が? うーん、私にはどう見ても人間には見えないのですが……」 “人类……?是说那一家宇宙人吗?虽然不管怎么看我都看不出他们像是人类的样子……”
「あら見た目の問題ではないわ? あの者達は妖怪のルール下には入らず、人間の社会に入ろうとしているじゃない」 “不要以貌取人嘛,这不是样子的问题。那些家伙并没有按照妖怪的行为方式,而是融人了人类社会的生活。”
  薬を売って歩き病人が居れば診察する。それは人間の社会での営為であり、妖怪の社会のそれとは異なる。   贩卖药品医治病人。这些都是人类社会的行为,和妖怪社会完全不同。
「確かに、我々妖怪とはちょっと馴染めてないですね。里の人間にとっては変わった人間だと捉えられている様ですが……」 “确实,对于我们妖怪来说稍微有些不太适应呢。虽然村子里面的人也将他们当作非常奇怪的异类来看待……”
「しかし、幻想郷の人間の義務を果たしていない」 “不过,虽然他们是人类,但是却没有尽到身为幻想乡人类的义务。”
  外の世界の人間にもいくつかの義務がある。学ぶ事、働く事、そして社会に参加する事、つまり納税だ。幻想郷ではそれに妖怪との付き合い方の義務もある。   外面世界的人类也有很多应尽的义务。学习,工作,参加社会活动,缴纳税款。在幻想乡之中也是一样。
「人間の義務……ですか。そう言われてみればそんな気もしますね。あの者達は妖怪を恐れないし、それどころか人間の力を強めパワーバランスを崩しかねない。ですがそれと今回の月侵略計画は何の繋がりが……」 “人类的义务……?被你这么一说我也确实感觉到了呢,那些家伙一点也不害怕妖怪,而且还具有强大的力量破坏了人类与妖怪之间的平衡。可是,就算是这样,又和这次的登月计划有什么关系呢……”
「さっき言ったでしょう? 私は住民税が欲しいと。人間の力を強めるといっても、怪我や病気を治したり、人間の護衛に付く程度ならなんて事もない。それよりは、納税の義務を果たして貰わないと、社会は参加できていない」 “我刚才不是已经说过了吗?我只是想要收取住民税而已。就算她们拥有强大的力量也好,只不过是贩卖一些药品,医治一些病人,保护村民之类而已。但是如果不缴纳税款的话,还是无法融人社会之中。”
「……もしかして、月の都に潜入して税金代わりに何か奪ってくるのですか? 彼の者が月の民だから」 “……难道说,你是打算潜入月之都,拿走里面的什么东西来当做她们的税款吗?因为那些家伙是月之民的关系。”
  藍は疑問の晴れた様子で私に問うた。私は珍しく自分が言った事が理解してもらえたようで満足した。   蓝带着一副恍然大悟的样子向我问道。我对于她终于理解了我的意图感到非常的满意。
「ええ、そういう事ですわ。月の都なんて侵略できる筈もありません。ですが、忍び込む事ぐらいは容易でしょう? 貴方にはその役目を負って貰います」 “对,正是如此。月之都是无法正面突破的。不过,要悄悄地溜进去应该没有那么困难吧?这个任务就交给你了。”
 
  ——ついに満月の夜が訪れた。   ——终于到了满月之夜。
  三日月は剣、半月は弓とも呼ばれていた。では満月は何と呼ばれているか。   三日月是剑,半月是弓。那么这个满月又应该叫作什么呢?
  それは鏡である。   满月是镜。
  太陽光を反射させる大きな鏡。それと同時に地上の闇を照らす。月の光は闇を照らす為、一見妖怪は苦手なように見える。だが一般に妖怪が月の光の下で力を持つのは何故だろうか。   反射太阳光线的巨大圆镜。同样照亮了地面上的黑暗。月光驱散了黑暗,妖怪们应该感到非常难过才对。但是为什么一般情况下,妖怪在月光之下显得更有威力呢。
  その理由は光というものは照らすだけではなく、同時に陰も生むからである。   那是因为月光不止带来了光明,同时还带来了更多的阴暗。
  薄明かりの月光の下では色んな場所に陰が出来る。草木、山、岩、建物、複雑な形状をした地上を月の明かりだけでは照らす事が出来ない。そして出来た陰が人間の恐怖を生み、場合によっては妖怪伝説となった。ある意味、月は妖怪の生みの親とも言える。   在微弱的月光下,大地出现了各种阴暗的角落。草术,岩石,建筑,拥有复杂地形的地面无法依靠月亮的光芒照亮每—个角落。于是这些阴暗的角落便诞生了人类的恐惧,有时候还会诞生许多妖怪的传说。从某种意义上讲,月亮也是妖怪的母亲。
  私は湖に映った満月を見ていた。湖上の満月は空に浮かぶそれよりも何かに浮かんでいるように見えた。そう思ってみると、空の満月はただの絵としか思えなくなってくる。   我望着映照在湖中的满月。湖中的满月甚至比天空之中的满月更加清晰,使得天空之中的满月越发显得像是画中的景象。
  水面に座っている私の脇に藍がやってきた。   我坐在湖面上,蓝急匆匆地赶到我的身旁。
「日が完全に落ちましたね」 “太阳已经完全落山了。”
「遅いじゃない、夜が明けるまで来ないのかと思っちゃったわよ」 “太慢了吧。我还以为你一直到天亮都不会来了呢。”
「いやいや、まだ宵の口です。夜はこれからですよ」 “别急别急,刚刚天黑而已。夜晚从现在才刚刚开始。”
  湖に映った満月は手の届く幻。遠くに見える月は天蓋に描かれた絵。基本は同じものである。   湖中映出的满月是触手可及的幻象。挂在天边的满月是描绘在空中的画像。基本两者是相同的。
  私はその幻と絵の境界を弄る事で月と地上の通路を創り出す。   我通过将幻象与画像相连创造出从地面前往月亮的通道。
「紫様。そろそろ、吸血鬼のロケットが月に辿り着いた頃じゃないでしょうか?」 “紫大人,差不多也该是吸血鬼的火箭抵达月亮之上的时候了。”
「さぞかし月は騒がしいでしょうね。今頃、良い勉強をしてる頃じゃないかしら?」 “现在月亮上面应该正陷入一片骚乱吧。这次,你又学到了有用的知识呢。”
「結局、あの吸血鬼は囮という理解で良いのでしょうか?」 “可以将吸血鬼他们理解为是我们设下的声东击西之计吧。”
「ん。まあ……そうね。それは間違いではないわね」 “嗯。算是吧……这么理解也没有错。”
「?」 “?”
  私は傘を閉じ水面に浮かんだ幻の月に傘を刺した。傘を手放しても何故か水の上に立ったままとなり、水の中に消えてしまうような事は無かった。   我将手中的洋伞收起向水中的月亮刺去。然后我松开手,洋伞竟然自己立在水面之上,而不是沉到水底。
  水面の月はゆがんで、一旦小さくなると今度はすぐに大きくなった。そして最も大きくなったところで傘を中心に月は割れ始めた。   水面上的月亮扭曲起来,稍微缩小了一点之后马上又变得更大起来,而当月亮变到最大的时候,以伞为中心月亮开始分裂起来。
  水面の月の真ん中に幅数センチほどの亀裂が入る。月は水ごと割れ、別の場所への入り口が見え始めていた。亀裂の向こう側から芳しい香りが漂ってくる。   水面上的月亮在正中间出现了多个细小的裂纹。月亮将水面分割开来逐渐出现了一道通往别处的入口。在裂纹的对面飘散出沁人的芳香。
  この亀裂の向こう側は吸血鬼達が先に着いているだろう月面である。この亀裂に入るだけで一瞬で月に辿り着くのだ。   这个裂纹的对面就是吸血鬼们先一步抵达的月亮表面。只要跨过这个裂纹便可以一瞬间抵达月亮表面。
  吸血鬼達は何ヶ月もかけて見窄らしいロケットを作り、十日以上も狭い空間で惨めな思いをして月に向かった筈である。   吸血鬼们花费了几个月的时间去建造火箭,并且在那狭小的空问里面憋了十多天才抵达的地方,竟然只要一步便可以到达。
  馬鹿馬鹿しい。月に行く事が目的ならば一瞬である。ここは幻想郷なのだから外の世界の魔法を真似る必要はない。   真是白痴一样。如果目的只是前往月亮的话,只要一瞬间便可以了。既然这里是幻想乡又何苦采用外界那样愚蠢的方法呢。
  だが、私は吸血鬼達が私の案に乗ってこない事も予想済みだった。   不过,我也早就知道吸血鬼们不会采取这种方法。
  あの吸血鬼は私が忘れた心を持っている。外の人間も忘れつつある感覚。そして式神に至っては、効率を最優先する為にその感情を良しとしない。   那个吸血鬼拥有我早已经忘记的感觉。甚至是外界的人类都已经忘记的感觉。而且对于式神来说只将效率作为优先考虑的目标。
  ——見窄らしいロケットで、惨めな思いをして旅するから楽しいのだと。最短の方法で楽して手に入れた物にはなんの価値も無いと。苦労を楽しもうとする余裕の心である。   ——在那个狭窄的火箭里面,凄惨的进行长达十多天的旅行。这种行为本身对他来说就是一种快乐。很轻易的便可以得到的东西毫无价值,历尽千辛万苦才获得的快乐才是最宝贵的。
  人間も妖怪も長く生きているとその心は失われていく物である。だが吸血鬼達にはその心が強く残っている。だから、私の手を借りて月に行く事を嫌がる事は判っていた。暫く自分達の手で月に行こうとしていたのだから。   不管是人类也好还是妖怪也好,活的时间越长越体会不到这种感觉。但是吸血鬼们却将这种感觉很好的保留了下来。所以,我相信他们一定不希望借助我们的帮忙去抵达月亮。而宁愿选择通过自己的努力去达到目标。
 
「いよいよですね。ついに月の民に反撃する時が」 “终于要开始了,向月之民反击的时刻。”
「そうね、藍。地上とのお別れに、貴方に月に行ってからする事の命令のヒントをあげるわ」 “是啊,蓝。在前往月亮上面之前,我要给你一个当你抵达月亮之后所应该做的事情的提示。”
「え、ヒントですか? 素直に命令していただいた方が有難いのですが」 “哎?提示?直接下达命令就好了嘛。”
「命令も、自分で考えた方が楽しめるでしょう?」 “命令还是自己思考更有趣不是吗?”
「まあ良いですけど」 “好吧。”
「この間、月の公転周期の話をしました。公転周期は予定よりも短くなっています。あれの理由を教えましょう」 “还是我们之前说过的有关月亮公转周期的问题。公转周期比预计的短。我来告诉你原因吧。”
「それは大変興味深いのですが……それがヒントなのですか?」 “这个问题我也很感兴趣……这就是提示吗?”
「月の公転周期が二十八日よりも短い理由は、大昔に仕掛けたねずみ取りなのです」 “月亮的公转周期比二十八天短,是因为很久以前机关上的老鼠被取走了。”
「?」 “?”
「喩え話をします。もし、満月を頼りに日常と月を繋ぐ妖怪が居たとしましょう」 “只是打个比方。如果,在满月之日有能够连接地面和月亮之上的通道的妖怪的话。”
「それって紫様の事ですよね?」 “这就是紫大人你吧?”
「喩え話です。簡単に通路を繋げられると知った妖怪は、ちょっと月の都に忍び込んで遊んでやろうと考えても不思議じゃありません」 “只是打个比方。如果有妖怪能够很轻易的打开这条通道的话,那么她便也有可能悄悄溜进月之都玩一圈。”
  足下の通路は人が入るのに十分な大きさまで広がっていた。私はその月への通路に飛び込んだ。眩しいまでに明るい昼間の光。空には大きな星、何処までも続く水面。そこは月の海だった。   脚下的通道逐渐扩大到足以容纳一个人通过。我飞到通往月亮的通道之前,里面发出令人目眩的明亮光芒。宽广的水面变成了一片月之海洋。
  藍も私に続けて入ってきた。   蓝也跟在我的身后走了进去。
  実はここの所、毎月、ここにやってきていたので藍も特に驚く事は無かった。ここから鴉に式神を憑けて地上の様子を見張っていたのだ。言うまでもなく、月の民の真似事をしてみただけだ。   实际上蓝对于这种行为已经见怪不怪了。我们只不过是在做和月之民一样的事情而已。
 
「……その妖怪は、天道の通り十五夜に通路を開けて月に忍び込む事にしました。喩え話ですけどね」 “……而那个妖怪,在十五夜的时候打开一条通道悄悄地溜进了月亮之上。当然只是打个比方。”
「はあ」 “嗯。”
「月の都に関する情報は少なく、取り敢えず行って見なければ始まらないといった感じでした。さあ、十五夜の日がやってきました。妖怪は意を決して湖に映った満月に飛び込んだのです。そこに見えたのもは[3]なんと……なんだと思う?」 “关于月之都的情报非常稀少,所以一切都需要到那里观察之后见机行事。终于,十五夜到来了。妖怪下定决心跳进映照在湖面上的月亮之中。接着他看到了……你猜他看到了什么?”
「一面の海、ですか?」 “无尽之海?”
「ご名答、よく判ったわね。月は非常に美しい海で覆われていたのです。で、その妖怪はすぐに理解しました。月から帰る方法も同じように海に映った星から帰れるのだと」 “答对了,非常好!月亮被非常美丽的海洋所笼罩着。于是,那个妖怪很快便意识到,和回到月亮的方法一样,通过映照在水面上的星星也能够达到任何地方。”
  私は今通ってきた通路が閉じないよう、再び傘を差し込んだ。そして傘をこれから向かう方向へ折り曲げた。何度と折り曲げ、歪な形にした。   我为了不让这条通道关闭,再次将伞向前面刺去。接着洋伞来回折了几个弯变成非常扭曲的形状。
「紫様、何をやっているのですか? そんなに傘を折り曲げて……」 “紫大人,您在做什么,这样扭曲洋伞的话……”
「内緒。お呪いのような物よ。で、さっきの喩え話の続き。帰り道もしっかりと用意した妖怪は安心して月の都を目指しました」 “保密,这是类似于咒语一样的东西。那么,继续我们刚才所说的那个比喻。在确保了回去的道路之后,妖怪终于安心地向月之都进发。”
「喩え……話ですよね?」 “只是……打个比方是吧?”
「同じ事を何度も言いません。そしてその妖怪は月の都に張られた結界の破り方を探しました。それは思ったよりも複雑で時間のかかるものでした」 “同样的话我不会再说了。接着这个妖怪又开始寻找突破月之都结界的办法。这个比想象之中还要花费了更多的时间。”
  私は目的地の方へ移動を始めた。藍も慌てて付いてきた。   我开始继续向前走去,蓝急忙跟在我的身后。
「やっとの思いで結界を破る鍵を見つけて、月の都に進入しようと思ったのですが、月の民の防御は固く、到底今のままでは敵わないか攻めるのに時間が掛かりすぎると思ったのです。賢い妖怪は一先ず撤退し、次の策を練る事にしました」 “最后妖怪终于找到了突破结界的办法,就在他即将进入的时候,却发现月之民的防御十分坚固,凭借他的能力完全无法与之相抗衡,而且强攻也需要花费很多的时间,于是聪明的妖怪决定暂时撤退再想办法。”
「……」 “……”
「月の民の追っ手を難なくかわし、地上から月にやってきた時に使った通路の所まで戻ってきました。そこで妖怪は衝撃の事実を見る事になるのです」 “在好不容易摆脱了月之民的追兵之后妖怪终于平安地回到了通往地面之上的通道。可是在那里妖怪却发现了一件令他感到十分震惊的事实。”
  藍は黙っていた。私の話に夢中なのだろう。   蓝沉默着,大概是被我所说的故事吸引住了吧。
「そう、通路は少しずつ閉じ始めていました。もう妖怪が入れるような大きさでは無かったのです。妖怪は驚きました『一体何故通路が閉じているのだろう。今夜が十五夜である限り閉じる筈がない』と」 “是的,那条通道正在逐渐关闭。入口已经缩小到妖怪无法进入的程度。妖怪不由得惊讶道‘为什么通道会关闭呢?只要今夜是十五夜,通道不就是不会关闭的吗?’。”
「それで、どうなったのでしょう。あ、いや喩え話でしたよね? どうなるのでしょう?」 “那么,后来怎么样了呢?啊,只是打个比方,但后来究竟怎样了呢?”
「退路を断たれた妖怪は大人しく降参するしかありません。何せ敵う相手では無いのですから」 “被切断了退路的妖怪只能够老老实实地投降。毕竟不是对方的对手。”
「そ、そうですか……。えーと、なんでそんな喩え話を聞く羽目になったんでしたっけ?」 “是、是这样吗……不过,为什么你要讲这个事情呢?”
「何言ってるのよ、月の公転周期が何故二十八日では無く、二十七日と三分の一日なのか? の話でしょ?」 “难道你忘了吗,我在告诉你为什么月亮的公转周期不是二十八天而是二十七天零八小时啊。”
「あ、そうでしたね」 “啊,对了。”
「そこまで話せば判るよね? 昔は十五夜は完全な満月であった。しかし何者かの手、恐らくは月の賢者の手によって自転周期を狂わされ、それによって公転周期は早められ、気が付かないうちに十五夜は満月とは限らない夜になってしまった。予想よりも早く満月が閉じてしまう様になった」 “说到这里你明白了吗?以前十五夜是完全的满月。但是因为某个人,恐怕这个人就是月之贤者吧,让月亮的自转周期改变,于是导致公转周期变快。于是在不知不觉中十五夜便不再是满月之夜,于是满月便比预计的时间更早结束。”
「つまり、満月を頼りに月に忍び込む妖怪を月に閉じ込める為に、月の賢者が仕掛けた罠、と言う事でしょうか?」 “也就是说,为了让那个在满月之时潜入月之都的妖怪被关在里面,月之贤者所设下的圈套是吗?”
「そう、もう遥か昔に罠を仕込まれていたというお話。憎き賢者に」 “是的。很久以前便设下这个圈套,真是一个可恶的贤者。”
  それからだった、一ヶ月を一律に三十日にする訳にいかず、地上の暦は混乱した。月の民は地上の暦などどうでもよく、ただ十五夜と満月を完全に一致させない為だけに月の公転を狂わせたのだ。月の民にとって地上とは、見下す為だけの場所でしかない。そこでの生活の利便性など、一切考える気もしなかったのだろう。   由于这个原因,一个月无法被平均地分为三十天,也搅乱了地上的历法。月之民对于地上的历法变成什么样子毫不关心,单纯只为了使十五夜和满月之时不会重合而改变了公转的规律。对于月之民来说,地面不过是他们俯瞰的场所而已,在那里的人们生活如何,他们完全没有考虑的必要。
 
  月の海は静かであった。波の音だけが控えめに聞こえてくる。その波の音は母なる海の音ではない。水分子がぶつかり合う音だ。月の海では何も生命は育まれていないのだから。   月之海一片宁静。只能够听到波涛的声音。不过这种波涛的声音和大海母亲的声音却并不相同。只单纯是水分子结合的声音。因为月之海并不会孕育任何的生命。
「喩え話でしたが、参考になりました。ですが……そのヒントから察するに」 “虽然只是比喻而已,但却可以作为参考呢。而且……从这个提示中我忽然发现一个问题。”
「何かしら?」 “什么问题?”
  藍は答え難そうにしていた。色々と言葉を選んでいるようだった。計算能力は高くても、文章処理能力はまだまだなのかも知れない。   蓝似乎不知该如何表达,她仿佛在努力的组织着自己的语言一样。虽然她的计算能力非常高,但是对于文字的处理能力似乎还差得很远呢。
「今……私達はその月の賢者が仕掛けたという罠にまんまと嵌っている事になりませんか? 月の都に辿り着くのに時間がかかれば、戻ってきた頃には満月では無くなっていると思います。そうしたらやはり帰れなくなってしまう。実際、月の都の結界を破るのに時間が掛かるんですよね?」 “现在……我们不就正在月之贤者所设下的圈套之中吗?如果我们前往月之都花费太多时间的话,那么等我们要返回的时候满月就会消失。这样的话我们不就回不去了吗?而且,要想突破月之都的结界本身就需要花费很多的时间。”
「あらいやだ、気が付かなかったわ」 “哎呀真讨厌,我竟然一点也没有察觉到。”
「いやお願いですから巫山戯ないでくださいよ。今は敵地にいるのです、ちょっとした判断ミスが致命的な事に繋がらないとも限りません。勿論、何か策があっての事だと思いますが……」 “拜托不要开这种玩笑啊。现在我们可是身处敌人的领地,稍有判断不慎都会引起致命的错误。难道说,你还留有后手吗……”
「そうねぇ、もし帰り道が無くなって月に閉じ込められたら、吸血鬼のロケットにでも相乗りをお願いしましょうか? もうそろそろ、月に着いている筈ですから。それとも私達の方が早く着いちゃったかな?」 “当然了,一旦回去的通道关闭的话,我们还可以搭乘吸血鬼他们的火箭返回呀。他们现在也应该已经抵达月亮上面了吧。还是说我们能比他们更快抵达呢?”
「もー、何処まで本気なのか判断に苦しみます。吸血鬼のロケットなんて、今頃海に打ち付けられて大破しちゃったりしてるかも知れないじゃないですか。紫様は見てないかも知れませんが、驚くほどにオンボロだったんですから」 “真是的,这种事情怎么可能嘛。吸血鬼的火箭现在说不定已经沉在月之海里面了,再说怎么能够把希望寄托在那种靠不住的东西上面。紫大人你没亲眼看到可能不知道,那火箭实在是一个非常靠不住的东西啊。”
  藍は怒っている振りを見せた。何だかんだ言って、私の命令通りにしか動く事は出来ないのだから、私を絶対的に信用するしかない。   蓝似乎有些生气的样子对我说道。不过因为她只能够按照我的命令行事,所以对于我只能够绝对信任。
「へぇ、そんなに言うほどオンボロだったのなら、もしかしたら月に行く前に燃え尽きてるかも知れないわね。何か仕掛けでも無い限り……」 “呵呵,要是真像你说的那么靠不住的话,也许在抵达月亮之前就已经因为摩擦燃烧殆尽了呢。那样岂不是一点作用都起不到……”
  私と藍が辿り着いた月は、いつも陽気な妖怪と人間達の喧騒が絶えない幻想郷では考えられないくらい静かであった。   我和蓝所抵达的月亮,是一个与总是充满了喧闹的人间界与幻想乡完全不同的异常静谧的地方。
  人間は都会の華やかさを求め、いつの間にか地上から静けさは失われていた様だ。辺境の幻想郷ですら騒がしい位だから外の世界は言うまでもない。   人类追求着都市的荣华,不知不觉间地上已经失去了静寂。就连位于边远之地的幻想乡都是如此喧嚣,外面的世界就更不必说了。
  だがしかし、月の都の方が文明は進んでいる筈である。月の裏側に存在する月の都はさぞかし騒がしいに違いない。もし落ち着いた繁栄を築いているのであれば、それは衰退の証か、それとも地上とは比べものにならない高貴な文明だと言えるだろう。   不过,月之都的文明应该是非常先进的。所以位于月亮背面的月之都一定是一个非常繁华热闹的地方吧。但是如果那边也一样宁静的话,会是文明衰退的证明吗?还是其拥有比地面更加高贵文明的证据呢?
 
  衰退か極楽浄土か。どちらにしても私は嫌である。私には都会の喧騒が必要なのだ。   不管是衰退也好,极乐净土也罢,不管哪个我都不喜欢。对于我来说都市的喧闹是必不可少的。
  そう思うと、この静かな月の何処かで吸血鬼達が騒いでいると思うと何だか懐かしく思えた。   这样想着,我忽然怀念起在这月亮上的某处引发骚乱的吸血鬼们了。

注解

  1. 这句话中漏了一个で,其实是不符合语法规范的。
  2. 此处为一语法错误,正确的用法应为“以ってしても”。
  3. 此处估计为“見えたものは”的误印。
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