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东方香霖堂/第23话

来自东方维基
< 东方香霖堂
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第175-182页
< 第22话   东方香霖堂   第24话 >
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春といえば桜、桜といえばお花見…幻想郷の春はとってもにぎやかだ。しかし、あいにくの雨で今夜のお花見は中止に…。そんなちょっぴり退屈な夜に、霖之助が語る月と暦の関係とは…!?コミック『東方三月精― Eastern and Little Nature Deity』(角川書店)も、現在好評発売中!!
うるおいの月 清润甘美之月
  散り急ぐ桜の花は雪解けを迎えたばかりの大地を白く染めていた。暫く暦を見る事を忘れていたが、外の景色から察するに四月はまもなく終わる頃か、もう五月に入っている頃だろう。今年の桜は咲くのが少し遅かったように思うが、数日の誤差は異変でも何でもない。ただ単に、今年の冬は暖かい日がたまたま少なかった、というだけだ。桜の花は暖かい日のみ芽吹き、寒い日は蕾を堅く閉ざすのである。暖かい日が少なければ、桜が咲くのは先延ばしになってしまう。   急于谢落的樱花把刚刚将积雪消融的大地染成一片白色。虽然我已经好久都忘记去看日历,不过从外面的景色来看,估计是四月快要结束,或者是刚进入五月的时候吧。尽管感觉今年的樱花开放得有点晚,但几天的误差算不上是任何异变。只是今年冬天的温暖的日子碰巧少了一点,仅此而已。樱花仅限于在温暖的日子发芽,寒冷的日子就会紧紧闭住花蕾。温暖的日子愈少,樱花开放的就会愈晚。
  ところで、幻想郷に残された数少ない文を読み解いてみると、百年以上前の幻想郷では、桜の咲いていた時期は三月の初めであると書いてある。現在の幻想郷では、順当に咲けば四月の終わりから五月の初めくらいである事から考えると、三月の初めとは随分と早い。という事は昔は冬の気温は、一月半以上も桜が早く咲く程、今よりも遙かに暖かかったのだろうか?   话说,在读解幻想乡残留下来的少量文书时发现,上面记载着在百年以前的幻想乡,樱花开放的时期是三月初。跟现在的幻想乡,正常情况下从四月末至五月初的开花时间相比,三月初可谓是很早了。这样看来,古时冬季的气温温暖到会使樱花提早开放一个半月以上吗?
  勿論そんな事は無い、今も昔も冬は寒い冬である。桜が三月に咲いていたのには別の理由があるのだ。   这当然不可能,自古至今冬天都是很冷的。樱花在三月开放是因为别的理由。
 
「――私だったら、散っている桜の花びらを全て、撃ち落としてやるぜ」 “——如果是我的话,可以把飘散的樱花花瓣全部击落哦”
「何よ、私だったら、散っている桜の花びらを全て、避けてみせるわよ」 “什么嘛,我的话,还可以将飘散的樱花花瓣全部躲过呢”
「そんな落ちてくるのが遅いもん避けたって、自慢にもなりゃしないな」 “能躲过飘落得那么慢的东西,根本就不值得自满嘛”
「何を言っているの。速い弾よりも遅い弾の方が避け難いって事もあるものよ」 “你说什么呢。有的时候慢速弹可要比快速弹还难躲呀”
  何やら、霊夢と魔理沙の二人が不毛な言い争いをしているようだが、それも仕様が無い。今日は花見をする予定だったのだが、中止になってしまったのだ。しかもその桜も、既に散り始めて緑色が目立つようになっているから、もう今日で最後になるかも知れないという。   貌似灵梦和魔理沙两人在争论什么没有结果的事情,不过这也没办法。今天本来是预定去赏花的日子,但却中止了。而且那樱树,已经谢落樱花到绿色开始显眼的地步了,所以也许今天就是最后的机会了。
  そんな貴重な桜も無情な雨の所為で花見をする事すら叶わず、こうして店の中で暇を持てあましている状態である。花見の予定が狂った事と、悪天候で最後の花が散ってしまわないのかと気が気ではないのだろう。行き場を失った苛立ちが口から出て、言い争いとなってしまっていた。   如此珍贵的樱花也因为无情的春雨的缘故而无法欣赏,目前就只是在店里玩弄闲暇而已。赏花的预定被打乱,和对坏天气会不会使最后的一片樱花掉落的担忧,让她们感到坐立不安吧。迷失了方向的焦躁脱口而出,便导致争论了。
「花びらなんて柔らかいもん撃ったって、何の自慢にもならないわ」 “击落花瓣那种柔软的东西,也不值得什么自满”
「じゃあ、自慢すれば私が一番乗りだな。花びら撃って自慢したという」 “那如果自满了的话我就是头阵了呀。在把樱花击落而自满这方面”
「さて二人とも、言い争いはそろそろ止めようか。花見が終わって夏が近づいた、今年の桜の花を散らすのは春風ではなくて春雨だった、それだけの事さ。何時までも不毛な言い争いをしてないで、もっと前向きに物事を考えていこうじゃないか」 “好了你们两个,就争到这里吧。赏花结束夏季临近。今年使樱花散落的不是春风而是春雨,仅此而已。别一直争论着没有结果的事情,让我们积极地向前看怎么样”
「不毛だなんて失礼ね。私達は、桜と私達の新しい関係を模索していたの。前向きでしょ?」 “说没结果什么的真是失礼。我们正在探索樱花和我们的新的关系呢。很积极吧?”
「遠い未来を見通せる程に前向きだぜ」
  言い方次第では前向きの様に聞こえてくるが、もっと近い未来、例えば今日、何をするべきか考えた方が良くないだろうか。 换个角度来说听起来是挺积极,不过思考一下更近的,比如说今天该做什么不是更好吗?
「私達は過去を振り返らない程に前向きだけど、ちょっと前に紫が『幻想郷の桜は咲くのが遅くて良いね』みたいな事言っていたわよ」 “虽然我们是积极的,不回首往事程度的,不过稍前紫说过‘幻想乡的樱花开得晚可真好’什么的”
「ん? それはどういう意味なんだい?」 “嗯?那是什么意思?”
「『外の世界は急激に冬が短くなってぇ、今は三月中に桜が咲いて散ってしまうのよぉ』って言ってた」 “‘外面世界的冬季突然变得很短,现在的话樱花在三月开放便散落掉了’她是这么说的”
  霊夢は妙にゆったりした口調で説明した。紫の真似のつもりだろうが……全く似ていなかった。アレンジされ過ぎて誰なのか判らない。   灵梦用格外缓慢的语调说明道。那算是在模仿紫么……一点都不像。编篡得太厉害都听不出是谁了。
「そ、そうか、それで彼女は冬が短くなった事について何か言っていたのかい?」 “这、这样啊。那她对于冬季变短的事情没有再讲什么吗?”
「『今年は二回も桜を楽しめた』ってさ。外の世界の桜と幻想郷の夜桜と」 “‘今年欣赏到了两次樱花’这样子。外面世界的樱花和幻想乡的夜樱”
  何故、幻想郷の方だけ夜桜なのかよく判らないが、外の世界と幻想郷で桜の咲く時期に違いが出てきても、妖怪にとってなんら不都合な事は無いのだろう。   不太明白为什么只有幻想乡的是夜樱,不过即便外面世界和幻想乡的开花时期变得有所不同,对于妖怪而言应该没有任何不妥吧。
「そうか、外の世界では三月には桜が満開になってしまうのか。余程、外の世界の冬は暖かいんだろうね。まぁそれはいいや。二人とも退屈そうだから、ちょっと不思議な話をしてあげよう」 “是嘛,在外面的世界,到了三月樱花就满开了呀。那外面世界的冬天一定是相当暖和呢。这倒没什么所谓。看你们两人都很无聊的样子,就给你们讲点神奇的事情吧”
  そう言って窓の方をちらりと見た。さっきより雨は小降りになっている気がするが、窓の外はしっとりと濡れていた。最後まで粘った桜の花もこの春雨ですっかり流されてしまうのだろう。   说罢我向窗外瞥了一眼。感觉雨比刚才要小了一些,但窗外已经湿润透了。坚持到现在的所剩的樱花也会被这场春雨给流送走吧。
「不思議な話って何?」 “神奇的事是什么?”
「ちょっとした小ネタだけどね。外の世界の桜が咲くのが三月に早まったと言っていたが、昔は三月に桜が咲いていたんだよ。幻想郷でも外の世界でも」 “只是点小资料而已。刚刚说外面世界樱花开放的时间提早到三月了,但从前就是在三月开放的。无论是幻想乡还是外面的世界”
「三月に咲いていた……って、一月以上も早く咲いていたって言うの?」 “在三月开放…… 就是说在一个月以前就开花了吗?”
「それじゃ寒くて花見どころではないぜ」 “那样的话冷得根本就不能去赏花嘛”
「いや、実際には一月以上早く咲いていた訳ではないんだけどね。ただ単に三月に咲いていたと言うだけさ」 “不不,实际上并不是一个月之前开花。只是在三月开花而已”
「何だよそれ。禅問答か?」 “什么啊。难解问答吗?”
「旧暦だよ。今では殆ど面影はないが、百年以上昔は太陰暦を使っていたんだ。旧暦では三月は新暦の四月の終わり位に当たるからね。旧暦を使っていた頃は、三月が桜の時期だったというだけさ」 “是旧历呀。虽然现在几乎都不熟悉了,但在百年之前使用的是太阴历。在旧历里,三月相当于新历的四月末。在使用旧历的年代,三月就是樱花开放的时期呀”
「旧暦? ああ、旧暦ね」 “旧历?哦哦,旧历呀”
「なぁ、前から気になったり、気にならなくなったりしていたんだが、旧暦ってなんだ? それに何で旧暦に変える必要があったんだ?」 “喂,我之前就有时在乎,有时又不去理会的,旧历到底是啥呀?而且为什么有必要换成新历呢?”
 
  ――僕は、二人の為に塩漬けの桜を浮かべた桜茶を用意した。ゆっくりとお湯を注ぎ、器の中で桜の花が咲いたら飲みごろである。たとえ花の下に居る事が出来なくても、桜の花を楽しむ手段は幾らでもあるのだ。   ——我为两人准备了漂浮有盐腌的樱花的樱茶。缓缓倒入热水,待茶碗中的樱花绽开,便到品茶之时了。就算不能够在樱花树下,也有好几种可以享受樱花的方法。
「霖之助さんがこんなお洒落なお茶を用意するとは思ってなかったわ」 “没想到霖之助先生还会准备如此文雅的茶呢”
「で、旧暦とは何かって話だったよね」 “然后,是要说所谓旧历是什么吧”
「それと、新暦に変えなければいけなかった理由だな」 “还有为什么有必要换成新历呢”
「旧暦というのは太陰暦の事で、月の満ち欠けを基準とした暦の事さ。太陰暦では月の満ち欠けが一巡して、新月から再び新月になるまでの二十九日から三十日を一ヶ月とし、さらに十二ヶ月で一年としたんだ」 “旧历就是指太阴历,是以月亮的圆缺为基准的历法。太阴历中把月亮的圆缺每循环一次,从新月至下一次新月的二十九天或三十天为一月,并以十二个月为一年”
「ああもしかして、一年をいくつかに分けた期間を『月』って呼ぶのは、それが理由なんだな」 “哦哦,将一年分成几段的期间用‘月’来称呼,原来就是因为这个呀”
「その通りだよ。それは新暦である太陽暦に変わってからも、呼び名は変わっていない。だが現在使っている太陽暦は、一ヶ月が三十日から三十一日であるから、太陰暦の方が一ヶ月の日数が一日くらい少ない。旧暦の一年は、新暦の一年より十日余り短かったんだ」 “正是如此。即便变成了新历的太阳历,称呼名也仍然没有变。不过现在使用的太阳历中,一个月有三十或三十一天,所以太阴历的一个月大概都要少一天。旧历的一年,要比新历的一年少十多天呢”
「一年に十日ぐらい、誤差のうちだな」 “一年十多天,在误差范围内呀”
「いやいや、そんな事はないよ。一年に十日も違ったら大変だ。十年も経てば春に雪が降る。二十年も経てば完全に夏と冬が入れ替わってしまうだろう」 “不不,哪有这回事。一年要差个十天可是大事哦。等过了十年春季就该下雪了。过二十年的话冬夏可就完全交替了”
「冬は暖かいな」 “冬天很暖和呢”
「冬が暑くなるんじゃない?」 “应该是冬天很热吧?”
「そんな感じで、だんだんと実際の季節と暦のズレが出てきてしまう。だから旧暦は、三年に一度くらいのペースで一年が十三ヶ月の年を設けたんだ」 “就以这种感觉,渐渐的历法与实际的季节就会产生偏差。所以旧历中,以三年一次的步调将一年设为了十三个月”
「昔はたまに<十三月>があったと言う訳か」 “也就是说从前会偶尔有〈十三月〉呀”
  魔理沙は桜茶を飲むタイミングを計っている。どの位待つと飲み頃なのか判らないようだ。ちなみに霊夢はとっくに飲み始めていた。   魔理沙在揣测喝樱茶的时机。看来是不知道该等多久才可以品茶呢。顺带灵梦的话早就开始喝茶了。
「いや残念ながらそれは違う。一年が十三ヶ月あったとしても、十三月という月は無かったんだよ。ではどうしたかというと、季節のズレが一番大きな月の後ろにおまけの月を追加したんだ。三月が寒くなって来て『これはもう二月の寒さだな』と感じられるようになった時に、三月の次の月も三月とした」 “可惜这是不对的。即便一年有十三个月,却也没有十三月这个月呢。要说怎么办的话,是在季节的偏差最大的那个月的后面追加了一个月。三月变得冷了,等感觉到‘这该是二月的温度啊’的时候,三月后便又为三月了”
「そんな感覚的なもんなのか? 滅茶苦茶だな」 “是这种感觉性质的东西吗?这也太乱来了”
「勿論、実際には厳密な計算から求められるんだが、計算なんてのは感覚を数値化する為の道具に過ぎない。全ての計算の裏には感覚があるんだ」 “当然,实际上是要求有严密的计算的,但计算什么的只不过是将感觉数值化的道具。所有计算的背后都有着感觉呀”
「でも、同じ月が二回あるってのはややこしくないか? 十三月の方が直感的だぜ」 “不过,同一个月份过两回不别扭吗?还是十三月更直观呀”
「二回目のおまけの月は、閏月と呼んで正当な月とは区別した。例えば二回目の三月は、閏三月と呼んでね。旧暦から新暦に変わった理由だけど、この閏月と言う物が余りにもややこしかったし、季節の巡りと一致しないのは何かと不便だったからなんだ。だから一気に現在の新暦である太陽暦が広まったんだ」 “第二回的追加月份被称为闰月,与平常的月份划分开来。比如说第二回的三月就叫做闰三月。说到把旧历换成新历的理由,一是因为这个闰月确实别扭,二来与季节变迁的偏差带来了许多不便。所以作为当今新历的太阳历就一下子遍及开来了”
「へぇ、昔の人は難しい事を考えて暦を作ったのねぇ。人じゃなくて妖怪かしら? 何で最初から今の暦を使わなかったのかなぁ」 “嗯嗯,古时的人们努力思索做出了历法呢。抑或是妖怪做的?但为什么不从一开始就使用当今的立法呢”
「太陰暦の方が、妖怪にとって都合が良かったからだろう。何日は新月だ、満月だと日付ですぐ判るからね。人間の持つ技術が進むにつれて、月が太陽に押されて次第に変わっていったんだろう」 “因为对于妖怪来说,太阴历要更加方便吧。哪一天是新月还是满月,看日历便一目了然了。随着人类的技术不断进步,月亮被太阳所压制,于是渐渐产生了变化吧”
「でもさぁ、幻想郷では妖怪の方が多いんじゃないの? 新暦に変える必要なんてあったのかなぁ」 “不过呀,幻想乡里不是妖怪比较多吗?有必要换成新历吗”
「幻想郷で新暦を使うようになった理由は、外の世界が新暦を使うようになったから、ただそれだけだよ。隔離されたとはいえ、外の世界と同じ暦じゃないと何かと都合が悪いからね。太陽暦自体は別に幻想郷で生み出された暦ではないんだ」 “幻想乡之所以开始使用新历,是因为外面世界开始使用新历了,仅此而已。即便是被隔离,但如果跟外面世界不是同一个历法的话,也会产生不便的。太阳历本身并不是在幻想乡创造的”
「そりゃそうだろ。妖怪が月を使うのを止めて日を選ぶなんて、よく考えなくてもおかしいしな」 “那是当然咯。妖怪舍弃月亮转而选择太阳,不用仔细想都会觉得很奇怪”
「そんな感じで要望がなかったのに無理矢理変わってしまったので、幻想郷の妖怪には未だ新暦に馴染めない奴らも居るって言う話だ。さらに言うと、幻想郷には妖怪が作った独自の太陰暦が存在するらしい」 “以那种感觉的,在没有要求的情况下勉强变换,所以据说有一些幻想乡的妖怪至今还没有适应新历呢。更进一步说,幻想乡好像有妖怪所作的独有的太阴历”
 
  ――二人は、不毛な言い争いをしていた頃とは打って変わって、機嫌を良くして僕の話を聞いているようである。   ——两个人跟争吵没有结果的问题时不同,貌似都愉悦地听着我的话。
「妖怪の太陰暦、妖怪太陰暦。月の満ち欠けだけでなく、月の光の色と縁の周期を一月とした暦で、人間が考察した暦より遙かに自然現象を読み取る事が出来る暦だそうだ。季節だけでなく地震や火山などの災害や、竹や笹の花の咲く時期、そういった物も周期に組み込まれているらしい。つまり日付を見ただけで、あとどの位で竹の花が咲くとか判ってしまう」 “妖怪的太阴历,妖怪太阴历。不仅是月的圆缺,同时又以月光月色以及边缘变化的周期为一个月份的历法,据说跟人类考案的历法比起来,要远远地容易从中读出自然现象来。不光是季节,好像还有地震呀火山等的灾害,连竹子的开花期都算在周期当中。也就是说只要看了日历,就知道再过多久竹子便会开花了”
「凄いな、それは。そこまで色々判るのなら、その暦を人間でも取り入れればいいじゃないか。確実に便利になると思うんだが」 “这好厉害呀。如果能知道那么多东西的话,人类也引进那个历法不就好了吗。我想绝对会很便利的”
「だが、この暦には人間が使うには大きな問題がある。何故なら一日の長さが今の一日じゃない。というか、一日という単位が存在しない。最小単位が一月なんだ。人間の一日に合わせると、新月は夜中で満月は昼間みたいな感覚だな。それに暦が一周するのは六十年という長い期間だし……妖怪は寿命が長いからそれでも良いかもしれないけど、いくら何でも、寿命の短い人間には不便極まりないだろう?」 “不过,人类想使用这个历法的话存在一个大问题。因为一日的长度与现在的一日不同。或者说,不存在一日这个单位。最小单位就是一月。从人类的一日来看,新月就是午夜而满月就是正午这种感觉。而且历法的周期是六十年这么久……妖怪寿命长所以这样或许也无所谓,但无论怎样,对寿命短暂的人类来说不就太不方便了吗?”
「ふーん。一日を嫌い、一月を選ぶ。妖怪はそこまで月に依存しているって訳か。だが、妖怪がそんな暦を使っている所を見た事がないぜ」 “嗯—— 舍弃一日,选择一月。妖怪如此地依存于月亮呀。但是我没见过妖怪有用这种历法呀?”
「作ってみたものの、結局殆どの妖怪は使っていないんだろうな。山の妖怪なんかは今でもそれを使っていると聞いているが……。ちなみにその妖怪太陰暦でも、閏月と同じ役目をする月は存在する。ただし、閏月という呼び名ではなく普通に十三月と呼ばれていて、この月がある年は特別妖怪の力が強まるらしい。妖怪が強くなる年って事で、人間にとって十三は不吉な数字だと言われている地方もあるらしいんだ」 “虽然做是做了出来,但结果绝大多数的妖怪都没有用吧。我听说山里的妖怪好像至今还用着这种历法…… 并且在这个妖怪太阴历中也有跟闰月起同样作用的月份。只是,不被称作闰月,而只是普通地称为十三月而已,好像有这种月的年份妖怪的力量会特别强力。因为是妖怪变强的年份,所以貌似在某些地方十三还被当作是不吉利的数字呢”
「十三が不吉だなんて、聞いた事もないな。十三年に一度の蝉の話は聞いた事があるが……」 “十三不吉利什么的,我可从来没听说过。十三年出土的蝉的话倒是听说过啊……”
「その話は僕がしたんだよ。ま、十三が不吉な数字って話はこの辺りでは余り聞かれないね」 “那是我给你讲的嘛。不过,十三是不吉利的数字这种事在这一带是不怎么听到过”
  僕が持っている妖怪太陰暦に関する知識はこの程度の物だ。これ以上詳しく聞かれても憶測でしか話せないので、お茶を淹れに席を立った。桜茶を淹れてしまうと外の桜の事を思い出して、また二人が不機嫌になってしまうかも知れないので、普通のお茶を淹れた。   我所拥有的关于妖怪大阴历的知识就这些。再被问一些更详细的事的话就只有去猜测了,于是我决定离席去泡茶。如果再泡樱茶,我怕两人会想起外面樱花的事,又开始变得不开心,所以我只泡了普通的茶水。
  僕の知っている事をあらかた出し尽くしてしまったので、会話が途絶えてしまった。静寂を破ったのは、霊夢の素朴な疑問の声だった。   因为我把所知道的几乎都讲完了,所以谈话便中断了。打破静寂的,是灵梦朴素的疑问声。
「ところで霖之助さん。閏月や閏年の『閏』って何の事? 他の会話で『うるう』って言葉が出てくる事なんて殆ど無いんだけど……」 “话说回来霖之助先生。闰月和闰年的‘闰’是指什么呢?其它交谈中,基本不会出现‘u ru u’这种词语呢……”
  何事も当たり前と思わずに、細かい事でも疑問に思う事は大切な事だ。人間を成長は知識を増やす事と直結している。それは過去を良く知り、過去から現在、さらには未来を知る事に繋がる。   不会想当然地去对待任何事,对细小的事也抱有疑问是很重要的。人类的成长与知识的增加直接关联。这又与认识过去,从过去到现在,乃至认识未来相联系。
「閏かい? えーと、うむ、閏ってのは、本物ではない、って意味がある大陸の言葉だったかな。三月の後にある二回目の三月は本物ではない三月という意味で閏三月と呼んだのさ。大陸の言葉だから、妖怪太陰暦には閏の字が使われていない。それで、閏という字が閏月とかの暦以外で使われていない理由だが、この言葉が太陰暦自体と合わせて入ってきたからだろう。元々、この国には閏という概念は無かったんだ」 “闰吗?哎——,嗯,闰的话好像是,不是真的,这种意思的大陆那边的语言。三月后的第二次的三月不是真正的三月,而被称为闰三月。因为是大陆那边的语言,所以妖怪太阴历中没有使用闰字。然后,关于闰字没有在闰月呀历法之外的地方所使用的缘由,是因为这个字是跟太阴历本身一同过来的。原本,在这个国家就没有闰这个概念”
「なるほどねぇ」 “原来如此”
「だが、閏という字は大陸では『うるう』とは読まれていない。閏が『うるう』と読まれるようになった理由だが……これがまたいい加減な話でね。閏って感じが大陸から入ってきた時代に、それに対応する日本語は存在して居なかったので、誰もこの漢字を読む事が出来なかったんだ。そのうちに、この字は潤うに似ているから『うるおう』と呼ばれるようになってしまった。閏三月は、うるおう三月とかね、いい加減なもんだろう? さらに『うるおう』じゃ言い難かったもんだから『うるう』に訛ったのさ。だから、うるうという読みには最初から何の意味もない。この言葉が他の会話に殆ど出てこないのも、こういう経緯が言葉だったからなんだ」 “不过,闰这个字在大陆那边并不读作‘u ru u’。关于闰被读作‘u ru u’的理由……是很牵强随便的。闰这个汉字从大陆过来的时代,日本没有能与之对应的词,所以谁都不能读出这个字来。不久,因为这个汉字跟润字相似,便被读作‘u ru o u’了。闰三月就是‘u ru o u’三月什么的,是很随便吧?之后又因为‘u ru o u’难读,于是讹化成‘u ru u’了。所以‘u ru u’这种读法从开始就没有任何意义。这个字之所以几乎不会在其它谈话中出现,是因为有这种经历呀”
「形が似ているから『うるおう』、さらに言い難いから『うるう』……ほんといい加減ね。霖之助さんはそれで良いの? 物の名前には人一倍うるさい人でしょう?」 “因为形似所以是‘u ru o u’,又因为难读而‘u ru u’……真是很随便呢。霖之助先生就这样认可了吗?关于事物的名称不是很爱唠叨吗?”
「言葉というのは一人歩きする。それに関しては僕がどうこう口出しする物じゃない。それに僕はこの『うるう』という読みは気に入っているんだ。潤いの年、潤いの月があるなんて、原義の本物ではない月、よりずっと美しいだろう?」 “语言这种东西可是自走自的。关于此不是我干预了就能怎么样的。而且其实我喜欢‘u ru u’这种读法。清润之年、清润之月,不比原意的不是真正的月亮要美好得多吗?”
「潤いの月ね、桜の咲いている時期に潤いの雨は要らないけどねぇ……って、雨が上がっているじゃないの!」 “清润之月么,樱花开放的时期倒是不需要什么清润之雨呢……等等,雨这不是已经停了吗!”
 
  ――窓の外はいつの間にか晴れ上がり、雲間から光が漏れていた。二人は諦めかけていた花見が出来ると言う事で、随分とはしゃいでいる。桜の花はまだ残っているのか判らなかったが、この二人にとっては宴会さえ出来ればどっちでも良いのかも知れない。   ——窗外不知何时放晴了,光芒从云间洒漏过来。两个人因为可以进行本已放弃了的赏花了,所以十分喧闹。虽然不知道樱花还有没有剩下,但对于这两个人来说,也许只要可以开宴会就怎样都无所谓了。
「今夜は霖之助さんも花見に参加するんでしょう? これで今年最後の花見になるだろうし、それに、潤いの桜も美しいしね」 “今晚霖之助先生也来参加赏花吧?估计会是今年最后的一次赏花了,而且,清润的樱花也很美丽呀”
「いつも言っているが、僕は外で宴会する事は好きじゃないんだよ」 “我不是总说嘛,我不是很喜欢露天的宴会啊”
「ふん、何を言ってるんだ。散々話を聞いてやったじゃないか。そのお返しに花見ぐらい参加しろよ」 “哼,说什么呢。刚刚听你唠叨了那么久。作为回报也应该来参加赏花呀”
  僕は理不尽な要求をされたが、今夜は花見に付き合ってもいい気分だった。春雨にも負けないで花を付けている桜があるとすれば、その花は一見の価値があると言えるだろう。雨露を蓄えた潤いの桜は、潤いの月の下で美しく散る、そんな美しい世界を想像し、僕はお酒が呑みたくなった。   真是不讲理的要求,但今晚我感觉去陪她们赏赏花也好。如果有不输于春雨的樱花存在的话,那朵樱花有值得观赏的价值。蓄满雨露的清润的樱花,在清润的月光下幽美地飘落,想象着这种美丽的世界,我开始想要喝酒了。
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